2012年05月21日

The Kenosha Kid

ピンチョン研究家 Steven Weisenburger による『重力の虹』詳註(1988刊)

Gravity's Rainbow Companion: Sources and Contexts for Pynchon's Novel


 では「謎」だった──つまりこの小説をめぐって何十本も博士論文が書かれていたのにだれにも「解明」できなかったのが the Kenosha Kid とは誰かということ。


 上記の Companion の大幅増補改訂版(2006年刊行)


ではちゃんとソースが明かされています。

インターネットの時代に入れば、こういう知識で研究者が全滅ということはなくなるんですね。


ケノーシャ・キッドとは Forbes Parkhill という作家による、Slothrop の子供時代(1920-30s)のパルプフィクションのヒーローなのでした。

 

Kenosha-kid.jpg
 
この絵のパロディまで載ってる以下のサイト、テキストのダウンロードの便宜つき。

http://themodernword.com/pynchon/Pynchon_kenosha_kid.html


 

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2012年05月17日

GR 061 独軍と英軍の心理作戦? いやはや。

「バイバイ・ブラックバード」は、もともとは二〇年代のポピュラーソング。ヨーロッパでは、黒人のエロスを売り物にしたジョゼフィーン・ベイカーのショーなどを通して広まり、後にはスイングバージョンも盛んに演奏された。戦時中ナチスの宣伝省は、ユダヤ人や黒人の手に染まったアメリカ音楽を禁止したが、にもかかわらずジャズ・ミュージシャンに「チャーリー&ヒズ・オーケストラ」バンドをやらせ、英米兵士の士気をくじく替え歌を吹き込ませて流布させた。そのなかに「バイバイ・ブラックバード」の替え歌も含まれる。

これ、面白いので、聴いてみて下さい。(昔のジャズレコードは歌が始まるまでに1分くらい演奏があるのがふつうでした)

歌詞はこんな感じです

Here is Mr Churchill's latest song dedicated to Great Britain:

I never cared for you before
Hong Kong, Burma, Singapore
Bye, bye, Empire

India I may lose too
Then I only have the London Zoo
Bye, bye, Empire

There's no one here who loves and understands me
Nothing but heaps of bad news they hand me

The Yankees are still out of sight
I can't make out wrong form right
Empire, bye bye.


これに対してイギリスがどう反撃したか、それを想像してピンチョンは『重力の虹』に Operation Black Wing 〈黒い翼〉作戦を描き込んだ――とサトチョンは考えています。つまり、V−2ロケットを打ち上げている黒人集団がいるというデマを流してドイツ軍兵士の意気を殺ぐ作戦ですが、ところが実際・・・(話を知っている人は、ご存じですね。エンツィアンたちのロケットのこと。)

〈黒い翼〉のような作戦を実行している主体として、 PISCES*という心理学・異常心理学・超心理学の研究者集団を描き出すところに、ピンチョンの博識が繰り出されるわけですが、PISCES のなかでも首謀格のポインツマンはスロースロップが空からの刺激に対して勃起する秘密を探ろうとして、アブリアクション病棟で、麻酔薬のアミタルナトリウムの溶液を注射して調査します。

*Psychological Intelligence Schemes for Expediting Surrender 降伏促進のための心理諜報計画(誰が報復すべきなのは明記されていない、と、わざわざテキスト本文に書いてある。

アブリアクションとは、トラウマを再体験させることによって、それと意識的に向かい合えるようにするという治療法ですが、ここでスロースロップが向かい合う無意識のコンテンツは、黒人と糞だらけ。

その導入に、「バイバイ、ブラックバード」の替え歌が流れます。というか、スロースロップがの変容した意識がそれを流している、というべきか。

Got a hardon in my fist,
Don't be pissed,
Re-enlist−
Snap−to, Slothrop!

Jackson, I don't give a fuck, 
Just give me my "ruptured duck!"
Snap−to, Slothrop!

No one here can love or comprehend me,
They just look for someplace else to send . . . me ...

Tap my head and mike my brain,
Stick that needle in my vein,
Slothrop, snap to!

この音韻を保ちながら、訳するとこんなでしょうかね。
 どうぞご一緒に節をつけて

  

     ボッキしてーる ペーニス
  つかーんだ 怒るな
  気を つけー、スロースロップ!

  俺のしった こっちゃねー
  "おんぼろダック"  よこせよ  (ruptured duck = 名誉除隊の印のバッジの俗称)
  気を つけー、スロースロップ!

  だれも愛して、わかって、くれない
  俺を回すことしーか、かーんがえてない

  脳天に 電気針
  両腕に 注射針
  気を つけー、スロースロップ!
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2012年05月14日

『重力の虹』のできごと:第一部前半

『重力の虹』は詩的な文章で綴られ(ギンズバーグの "Howl" の文体を思わせるところもあり)、何の断りもなく誰かがみている夢で章が始まるなど、カッコヨクできすぎていて、いつ何処で誰が何をして、それがどういう繋がりにあるのか読みとるのは辛い本です。原文でもすらすら解ることはなく、ネイティブの文学研究者が2回め、3回めを読んで細部の意図がくみ取れるといった感じでしょうか。


 翻訳ではニュアンスの欠落は避けられないので、細部の理解はさらに辛いことになるでしょう。というわけで、こういう表を作っていこうと思います。ネタバレになる記述も出てきそうですが、「ネタ隠し」が多すぎて楽しめない小説なので、やり過ぎないよう最小限の基本的なネタ提供は、この表ではやっていきます。こういう形であらすじの全貌を可視化して、公開していこうと思います。


ファイルは、iWORKS の mumbers で作って、PDFファイルにしたものです。


    GR 1-1 表.pdf


 アドビのリーダーで拡大してごらんください。大きさを調整してのプリントアウトもできるはずです。

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2012年05月07日

GR026 スロースロップの秘密



空に現れる不可視・不可聴のロケット、だがそれにスロースロップは特異な反応をするのだ。空から現れるものに対して謎の反応を示してしまう。だからロンドンのロケットの落下地図と、彼の性愛地図とは一致するんです。その謎を〈彼ら〉は調査しているわけです。これ、まるでアングラコミックのノリですよね。一九七三年、若手で一番の力量を持った作家が、アングラのノリで書いた文章を、『メイスン&ディクソン』のちょっと前の時代の思考に接続しました。雲から現れたピューリタンの神の手。その神さまと帝国主義の最終戦争における復讐兵器との関係を、読者は考えるよう仕向けられます。

 古いタイポグラフィーの効果を狙ったりしているあたり『M&D』の先取りにも見え興味深いので、テクストページの一部をPDFにして貼っておきます。


 

23016.jpg

 


英国ダブル・サマータイムで六時四三分一六秒、死のドラムのように打たれた空からは、まだ残響の呻りが聞こえる。と、スロースロップの──え、なんだ? そうだよ、GI配給のパンツの中を覗いてみろよ、もそもそ起き上がって、飛びだそうとしているの、なんだなんだ、この勃起、ヘイ、神様、なんのせいだい?

 彼の経歴に、そして、お助けあれ、彼の調査書類[ドーシェイ]にも書かれている。この男、空に顕現するものに、きわめて特異な感受性をもって反応する(しかし、勃起とは)

 故郷マサチューセッツ州ミンジバラの会衆派教会墓地にある、一つの片岩の墓石。そこに彫られた雲から出づる神の手の、その指先は二〇〇年の歳月の火と氷の鑿に削られている。墓碑に彫られた言葉はこうだ──



  一七六六年三月四日 享年二拾九

     ニテ永眠セシ

コンスタント・スロースロップ

     を偲びて


死は自然への負債なり

我は返せり、いつしか君も

 

 コンスタントは見た。それも単に心で見たのではない。俗世の雲間から、目もくらむような光に縁取られた石の手が、彼をまっすぐに指さすのを見たのだ。(……)





ここで「会衆派教会」とはピューリタンのうち、よりピュアなセクトで、新天地を求めて、ニューイングランドに渡った17世紀の移民の多くを占めていました。スロースロップから10代ほど溯った先祖のウィリアムは、後に明記されますが、ジョン・ウィンスロップ総督と一緒にアメリカに渡ってきてアメリカで最初の発禁書を書いている(それ故にイギリスに戻されこの地に眠っていない)という点で、ピンチョンの祖先、ウィリアム・ピンチョン(1590-1662)に関する史実と重なります。子孫のコンスタントも、異端の考えの持ち主だったようで、死を「神」ではなく、「自然」への負債であると言っています。


  なお、緑なすバークシャーの大地とは、『スロー・ラーナー』所収の「秘密のインテグレーション」(一九六四)の舞台でもありました。この短篇は戦争末期から数えて約二〇年後が舞台。元アル中の小学生ホーガン・スロースロップは、タイロンの甥のようです。


 ニューイングランドの墓石の描写がこのあとに続きますが、画像検索してみました。ざっとこんな感じでしょう。このスタイルで、雲の中から神の手が出ているのか。この図像が、ロケット落下とが、どのように繋がるのか。それもこの小説の数多い謎の一つとして継続していきます。続きも訳しておきます。



4057838811_9ff8dd7ccc.jpg
 

 


その河のせせらぎと丘のスロープの上空にそれを見たのは、息子のヴァリアブル・スロースロップも同じだった。実は家系図の根っこの方へ、九世代・十世代とさかのぼっていくと、みんな等しくそれを見ている。始祖ウィリアムを除いた一家はみな、沼地に接する長い斜面、楡や柳の冷たい影が覆い、ミントやミソハギの落葉の降り積もった豊かな腐土のなかに溶け込み、土と一体化した(密度の濃い文章がまだまだ続きます)


posted by GR at 20:49| テクスト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

018 スロースロップの机の上、その美しい散らかりについて



一九四二年以来、この机は一度も木肌を見せたことがない。基底部をなす官僚的屑垢の組成は──積み上がった層を何年もかけてふるい落ちていった数百万個の消しゴムのカス、鉛筆の削りカス、乾いた出がらしの茶とコーヒー滓、砂糖とハウスホールド印のミルクの跡、大量の煙草の灰、タイプリボンから飛びちった細かな黒粉、成分が分解しつつある図書館用糊、粉砕したアスピリン。その上に、四散したクリップ、ジッポの発火石、輪ゴム、ホッチキスの芯、煙草の吸いさし、つぶれた箱、落ちたマッチ、ピン類、ペン軸などが積み上がる。色鉛筆の使い残りは(レア物の薄紫や黄褐色を含んで)全色におよび、木製のコーヒースプーンと、スロースロップの母ナラインが遠くマサチューセッツ州から送ってきたセイヤー社の〈スリッパリー・エルム〉喉飴と、テープ片、紐きれ、チョークがこれに加わって・・・そのまた上の層には忘れられたメモと、使い切った淡黄色の配給手帳、伝椀号の控えと忘れられた手紙と、ぼろぼろになったカーボン紙が載っている。「米兵ジョニーがアイルランドで見つけた薔薇」を含む十二曲のウクレレのコードのメモも見える(「あいつなかなか気の利いた編曲をやるんだ」といつかタンティヴィが言っていた。「アメリカ版のジョージ・フォーンビーってとこだ、想像できるかな」と言われたが、ブロートは想像しないことにした)。その上にクレムルのヘアトニックの空瓶、迷子のジグソーパズルのピースたちの帰属先は、ワイマラナー犬の琥珀色の左目、緑のビロード・ガウンの襞、遠景の雲に描きこまれたスレートブルーの筋、爆撃ゆえか日没なのかオレンジ色に光る雲、空飛ぶ要塞≠フ機体についた鋲、ピンナップガールのピンクの内股・・・それから合衆国陸軍諜報部刊行の『週刊諜報摘要』が二、三冊、螺旋状に弾けて切れたウクレレ弦、糊のついた色とりどりの星の入った箱、懐中電灯の部品、(ときどきスロースロップが鏡代わりに自分のぼやけた顔を映す)ナジット靴墨の缶の蓋。それらすべての上に、廊下を進んだ先のACHTUNG図書館から借り出された参考書類──『ドイツ語技術工学事典』、外務省刊行の『スペシャル・ハンドブック』、『タウン・プラン』──が積み重なり、加えて、だれかが盗んだり捨てたりしない限りはいつも熱心に購読している『世界のニュース』も載っている。


 

 文学史に残るカタログ手法の傑作パラグラフ──少なくとも、このワンショットを組み立てるのに、相当時間&想像力を使ってますよね。


 雑然(反ピューリタン感覚)をポジティブなものとして捉える美学と倫理も見えてきます。


 ウクレレを弾くスロースロップは「アメリカ版ジョージ・フォーンビー」と言われていますが、この名前は Inherent Vice にも出てきました。(ハーマンズ・ハーミッツが、この人のコピーをやったことをドックが覚えていた)。


 ビートルズの「フリー・アズ・ア・バード」のビデオの最後に、後ろ向きで出てくるウクレレ弾きのおじさんがいますが、彼が George Formby です。あのウクレレの演奏自体はジョージ・ハリスンで、実は彼、ビデオの最後に、自分自身を後ろ向きで出してくれと頼んだらしいのですが、ビデオ・アーティストのジョー・ピトカに、現在形のビートルが出ては作品のコンセプトが崩れると断られたみたいですね。本当はそのあとまもなく、ハリスン自身、過去の影になってしまうので、今からでも取り替えてあげられるといいんだけど。

 
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015 アデノイド・モンスター

 


 パイレート≠ニ渾名されるプレンティス大尉の「特技」は他人の夢想を掠奪こと。この能力を有望とみて活用する戦争のヘッドクォーター〈ザ・ファーム〉の命で、ノーヴィ・パサール(第一次大戦の原因をつくったバルカン半島の、外交的要衝)担当の外務省の役人、オズモ卿の頭から彼の夢想を清掃する仕事を仰せつかった。卿の仕事に差し障りがないように、彼に代わって彼の夢想をしてさしあげる任務である。


 Did you know?  Pynchon is crazy!


 しかも、この部分をミュージカル仕立てで、うたと踊りつきで見せてくれる。パイレート自身がトップハットにステッキ姿で踊るその映像が読者の前に映し出されるのだ。


 その、オスモ卿の脳から沁み出るファンタジーというのが何かというと……ある日、パイレートはその「夢想」に街で出会ってしまう。

 

注意深くにじり寄る黒靴のパイレート。そいつは敷石の上をぬるりぬるりと、カタツムリのように彼に向かって進み寄ってくる。通った跡の舗道に光るネバネバは、霧のせいでそう見えるわけじゃない。パイレートは恐怖によろけながら後退。とりあえずの難は逃れたが、知ってしまったことは消し去りようもない。そいつはなんと、肥大扁桃腺[アデノイド]であったのだ! いや扁桃腺といっても、セントポールの聖堂ほどの大きさ。しかも時間の経過とともに肥大化していく一方なのだ。ロンドン中が、ひょっとしたらイギリス全土が、壊滅の危機!

 

Carefully, black-shod step by step, Pirate approached the thing. It began to slide forward to meet him, over the cobblestones slow as a snail, leaving behind some slime brightness of street-wake that could not have been from fog. In the space between them was a crossover point, which Pirate, being a bit faster, reached first. He reeled back, in horror, back past the point−but such recognitions are not reversible. It was a giant Adenoid. At least as big as St. Paul's, and growing hour by hour. London, perhaps all England, was in mortal peril!


(挿入歌、省略)


踊るコーラスラインの乙女たちは、毛皮のバスビー・ハットにジャックブーツ姿。別の一角でブレイザラード・オズモ卿が、ぐんぐん肥大してゆく自らの扁桃腺に吸収されていく。これはエドワード朝医学ではまったく説明のつかない現象・・・ほどなくメイフェア広場は逃げだした男達のトップハットが散乱、イーストエンドのパブの灯りの下は閑散として安香水の匂いだけが漂うなかを、怪物ノドチンコが暴れまくる。とはいえランダムに人を襲うのではない。この魔物にはマスタープランがあるのだ。使える人間だけを選り分けている。この英国にて今また始まった、新たなる〈選ばれ〉、新たなる〈見捨て〉。内務省も手の打ちようがなく、痛々しいヒステリックな逡巡の症状・・・何をすべきなのか、だれにも分からず・・・そのままずるずるロンドン全域に避難命令発令となった。トラス構造の橋の上をガタゴト、黒のフェイトンが連なって動いていくさまは正に蟻の行列だ。空に観測気球が上がった。「見つかりました、いまハムステッド・ヒースです。止まっています。息をしてます・・・吸ってえ、吐いてえ、みたいな・・・」「音は聞こえるか」「スゴイです。オゾマシイ、鼻の穴の怪物が鼻水をズルズル啜ってるみたいな音がします。あっ、動きました。ああっ、なにを・・・なんてことだ、こ、これは・・・とても放送できません、あーーっ!」突然、送信が途絶える。明け方のティールブルーの空を気球が昇っていく・・・

 

Chorus line of quite nubile young women naughtily attired in Busbies and jackboots dance around for a bit here while in another quarter Lord Blatherard Osmo proceeds to get assimilated by his own growing Adenoid, some horrible transformation of cell plasma it is quite beyond Edwardian medicine to explain . . . before long, tophats are littering the squares of Mayfair, cheap perfume hanging ownerless in the pub lights of the East End as the Adenoid continues on its rampage, not swallowing up its victims at random, no, the fiendish Adenoid has a master plan, it's choosing only certain personalities useful to it−there is a new election, a new pretention abroad in England here that throws the Home Office into hysterical and painful episodes of indecision . . . no one knows what to do . . . a halfhearted attempt is made to evacuate London, black phaetons clatter in massive ant-cortege over the trusswork bridges, observer balloons are stationed in the sky, "Got it in Hampstead Heath, just sitting breathing, like . . . going in, and out . . ." "Any sort of sound down there?" "Yes, it's horrible . . . like a stupendous nose sucking in snot. . . wait, now it's . . . beginning to ...oh, no . . . oh, God, I can't describe it, it's so beast−" the wire is snapped, the transmission ends, the balloon rises into the teal-blue daybreak. 

 

 


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2012年05月05日

Vは復讐のV──V2ロケットについて映像で知ろう。

Vロケットに関しては、この映像がよくまとまっています。


http://www.youtube.com/watch?v=ro4ApX7EhJw&feature=related


 Wings of the Luftwaffe (独逸空軍の翼)と題する、ディスカバリー・チャンネルの45分番組(13回シリーズの Episode 11)です。タイトルは V1 ですが、V2についても詳しい。

http://www.tvguide.com/tvshows/wings-luftwaffe/episodes/284121


 3:00 からのナレーション

"Weighing over 14 tons, with the range of nearly 200 miles, it bore its 1-ton warhead at the top speed of 3,400 miles per hour."

 

(200マイルというレンジは開発を進めていた V-2Bのものだと思われる)

・warhead(弾頭)に積載した爆薬1トン

・時速3400マイル=約5500キロ というスピードが重要で、これは音速(1225Km/h)の4.5倍に相当する。聞こえない破壊物が落ちてくるという恐怖。

(『重力の虹』のスロースロップは、それが自分をターゲットにして落ちてくると信じている。それを信じる統計的な理由があるのだ。)


 映像の

36分36秒くらいから 41:00 くらいに V2の話が簡潔にまとまっています。


・launch pad(発射台)が移動式。すべてを数台の車で運んでどこからでも発射できた。

・1942年末に最初の打上が成功と

・軌道の安定と誘導システムの精緻化が問題だった。 (38分50秒に壮絶な爆発映像)


・燃料は液体酸素とアルコール

・重力加速度: 55,125 pounds と言ってます。約25トン重。

・推力重量比が 2.0 近くもあった。

・飛行距離は最大60マイル。飛行時間は4分に若干欠ける。


ロケット開発の場:バルト海のウセドム島にあるペーネミュンデ(英語では「ピーナマンダ」のように発音している)

33分48秒くらいから、バルト海のウセドム島にある人面のような映像が印象的です。

 

『重力の虹』第3部では、終戦の夏、スロースロップがここにやってきます。


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2012年05月04日

GR006 バナナとロケット

★生と繁茂 against  ☆死のロケット文明

 1944年12月。ドイツ軍はV2ロケットをロンドン市街に降らせている。『重力の虹』に登場する最初の視点人物は海賊(パイレート)≠フ渾名で呼ばれるプレンティス大尉。〈ザ・ファーム〉と呼ばれる──より漠然と〈彼ら〉と呼ばれるものの一部か──諜報&作戦事業本部の指令で動いている。彼が住むのはテムズ河畔、チェルシー・エンバンクメントの由緒ある(ロセッティ兄妹の大麻好きの友人が住んだ)メゾネット。その屋上で、彼はパナナを育てている。長い1文の後半を、現物つきでお見せしよう。

屋上の草はおおむね枯れて腐り、その奇なるアルカロイド分子と共に土に還った。その土の上に、後を継いだ住人が飼育した折紙付きのウェセックス・サドルバックの三頭の雌豚の垂れる糞便と、そのまた後を継いだ住人たちが飾りに植えた木々の枯葉と、あまたの美食家が食べ残し吐き戻した名状しがたき食物が入り混じり、これを歳月の手がパテのようにこねまわして、厚さ数フィートに及ぶ、信られないほど黒々とした極上の屋上庭園壌土ができあがった。この土なら、バナーナだって育つことは請け合い──

but most returning, as fragments of peculiar alkaloids, to rooftop earth, along with manure from a trio of prize Wessex Saddleback sows quartered there by Throsp's successor, and dead leaves off many decorative trees transplanted to the roof by later tenants, and the odd unstomachable meal thrown or vomited there by this or that sensitive epicurean−all got scumbled together, eventually, by the knives of the seasons, to an impasto, feet thick, of unbelievable black topsoil in which anything could grow, not the least being bananas. 

豚の糞や酔っぱらいのゲロが、生を育む黒々とした土を生むというイメージが印象的だ。この肥沃土でプレンティスはバナナを育てている。

かくしてパイレートは、自ら催す〈バナーナ朝食会〉で名を馳せる。会食者はイングランド中からやってきた。なかにバナナ・アレルギーやバナナへの敵意をあからさまにする者までいたのは、土が環をつなぎ鎖を伸ばして神のみぞ知る網目構造を組織していく、バクテリアのポリティックスなるものを観察するため。彼らの目にしたバパナの実は、しばしば身の丈一フィート半にまで及んでいた。驚愕の事実である。

下線部、の原文は
the soil's stringing of rings and chains in nets only God can tell the meshes of

★人間による死の化学営為と対比される、黒々とした土とバクテリアによるアンダーグラウンドな組織づくり。「環と鎖の複雑な網目組織」について、人類が知るようなった始めが、ケクレによるベンゼン環の発明だった。それ以降、人類のケミカルなエリートたちは地球に対して何をしてきたか。
『重力の虹』という小説は、ドイツのIGファルベン社が──もちろんアメリカのデュポン、イギリスのICIとも結託しながら──染料-爆薬-繊維-プラスチック-向心性ドラッグのコンツェルンを形成しつつ、〈戦争〉の領土を拡げていくさまを描く。もう少しだけ紹介しておこう。プレンティスは──

 螺旋階段を屋上ガーデンまで上り、ひょいと立ち止まってテムズ河の景色を見つめる。太陽はまだ地平線の下だ。今日も降雨の気配はあるが、街の空気は今のところ珍しく澄んでいて、巨大な発電所も、その向こうのガス工場も鮮明だ。煙突も通気口も塔も配管も、まるで朝のビーカーについた結晶の粒のようにくっきり見える。蒸気と煙が捻れながら噴き上がっている。
 「ハアーッ」。声なき咆哮。口から漏れた蒸気が欄干を抜けていく。「ハアアアーッ!」朝の屋上が踊る。巨大なバナーナの房々は輝く黄色と潤う緑だ。階下の連中はバナーナの朝食の夢を見ながら涎を垂らしているだろう。今日もまた麗らかな一日が、何事もなく──
 いや、それはどうか。遠く東、ピンクの空の下の縁、眩しいほどに煌めくあれは新星か、そのくらい明るい光だ。欄干にもたれて見つめる。きらめく先端はすでに短い垂直の白線になった。北海を越えたどこか・・・そのくらいの距離はある・・・その下は凍えた光を塗りたくった氷原か・・・

 重工業時代のロンドンの夜明けの光景、その冬のキラメキが、美しくというよりは忌まわしく描かれている。東に上がった☆のキラメキは何だ。下に「垂直の白線」を引いている……
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2012年05月03日

1978年盛夏、僕はこれで『GR』を読みました。読めたかどうかは別として。

僕が最初に挑戦した Gravity's Rainbow は イギリスから出ていた paper のpicador 版でした。これは版下にオリジナルの Viking のフォトコピーを使っているようで重宝しました。


 なにより表紙が気に入っていました。読み込んでいるうちにビニールコーティングが、印刷のインクを乗せたままきれいに剥がれました。ぼくはそれを


「東北沢ハウス」というアパートのトイレの、小さな化粧ガラスの窓に貼っていました。


 人間の生、および性と結合した、鋼鉄の勃起としてのロケットのありようを如実に描いています。人間の生、および性と結合した、鋼鉄の勃起としてのロケットのありようを如実に描いています。今手元にあるのは、表紙のない、中身の飛び出たものですので、この絵は30年以上ぶりに見たことになります。ネットさまさま

 

 

picador75.jpg
 
 
posted by GR at 23:14| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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